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第二回国際スクールを開催いたしました

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2019年3月7日(木)~10日(日)にホテル季古里(岐阜県飛騨市)において、国際スクールを開催いたしました。「地球内部のエネルギー循環、熱史、化学不均質の形成進化」というテーマのもと開催された今回のスクールは、講師として、William F McDonough氏 (Univ Maryland) 、Andrew Campbell氏 (Univ Chicago)、Barbara Romanowicz氏 (UC Berkeley)、Stephane Labrosse氏 (ENS Lyon)の4名の地球科学者に加えて、地球ニュートリノに関する特別講師としてMark Chen氏 (Queen’s Univ)をお迎えし、領域内外から総勢40名(うち海外の大学からの参加者10名<アメリカ・カナダ・フランス・台湾の4ヶ国>・学生20名・外国人18名)の参加がありました。世界をリードする研究者達によって、地球の熱進化・化学進化という軸のもとで4日間にわたり、地球化学、地震学、超高圧実験、ダイナミクスモデリング、そして地球ニュートリノという多様な分野に渡る講義が行われました。合間には温泉や雪景色も楽しみながら、静かな和風旅館という落ち着いた環境で、基礎の理論から地球の巨視的な描像までの濃密な議論が繰り広げられました。

国際スクールに先駆けて、初日には同会場にて地元飛騨の高校生に向けたパブリックセッションが行われました。(詳しくはこちらをご覧ください。)その後、富山駅および富山空港からチャーターバスを利用して現地入りした参加者達も合流し、国際スクールは、McDonough氏による、地球の化学組成構造に関する講義でスタートしました。地球の形成過程や化学組成モデルを改めて考える契機となる、刺激的な講義となりました。

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その後、青山慎之介特任助教(新潟大学)による、日本列島の発達史や、飛騨の地質に関する特別レクチャーが行われ、続いてポスター発表参加者による1分間プレゼンテーションも行われました。

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夕食で飛騨牛や山菜などを楽しんだ後は、講義会場にてアイスブレーカーが行われました。様々な背景を持つ参加者達も徐々に打ち解け、初日からあちこちで活発な議論が繰り広げられました。

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ウインタースクール2日目は、前日に引き続いてMcDonough氏による講義が行われました。次に、午後に控えた神岡地下施設の見学に先立ち、Chen氏による地球ニュートリノに関する特別講義が行われ、原理、観測方法や、得られる地球内部情報についての理解を深めました。

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昼食後、バスに分乗して移動し、神岡地下実験施設の見学に向かいました。神岡地下実験施設の入り口では各自ヘルメットを着用し、暗く長いトンネルを抜けるといよいよ実験施設に到着しました。

到着後二つの班に別れ、液体シンチレーターを用いてニュートリノを検出しているKamLAND、5万トンの超純水でニュートリノを検出しているSuper-Kamiokande、さらに重力波の検出を試みているKAGRAを見学し、それぞれの実験施設において研究者の方々に英語で解説をして頂きました。

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参加者からは、「地球科学の分野ではなかなか見ることのできないスケールの大きな実験施設に圧倒された」、「物理学の根本的な問題に、多くの研究者が協力して挑む姿に感銘を受けた」といった声が聞かれました。

神岡地下実験施設のツアー終了後バスで宿に戻り、夕食で再び飛騨牛に舌鼓を打った後に、前日同様、1分間プレゼンテーション、ポスターセッションが開催されました。

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3日目は朝8時半から午後1時頃までCampbell氏による講義が行われました。この講義では、地球形成時における金属鉄とケイ酸塩の間の元素分配がどのような条件下で進んだのかを、高温高圧実験の結果から制約することについて学びました。前日のMcDonough氏の講義で紹介された地球マントルの化学組成が、どのようにして説明されうるのか、さらに高温高圧実験の結果の熱力学的な背景についても分かりやすく説明して頂きました。

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昼食休憩時に参加者での集合写真を撮った後、午後2時頃から6時過ぎまでRomanowicz氏の地球マントルトモグラフィーについての講義が行われました。この講義では、地震波トモグラフィーの基本的な原理や波形インバージョン手法についての解説があった後に、これらの手法を応用することによって得られたマントルの内部構造についての最新の知見が紹介されました。マントルプリュームの構造やマントル最下部における超低速度層の分布については、受講生だけでなく講師陣も興味が大きく、活発な議論が展開されました。この日は朝から晩まで講義づくしで、ハードな1日でしたが、美味しい夕食でリフレッシュした後に、前日に引き続きポスターセッションが執り行われました。

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最終日の4日目の朝食時には、ベストポスター発表賞を受賞したIngrida Semenecさん (Queen’s University)、Liang Yuanさん(東北大学)の授賞式、全参加者への参加証明書の授与、講師陣へのお礼の品の贈呈を行いました。その後朝8時半から午後1時までLabrosse氏に地球の熱史についての講義をして頂きました。地球の熱史を議論する上で基本となる、地球内部の熱源や熱流量、マントル対流の物理と熱輸送についての解説の後に、マントルポテンシャル温度の地球史を通した低下はどのように説明しうるか、さらにマントル最下部にはマグマオーシャンが長期間にわたって存在していた可能性についての議論が展開されました。

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たくさん質問がでたこともあって、終了したのはバスの出発時間の直前となり、お昼ご飯は各自バスの中で食べることになりました。クロージングの時間が取れなかったため、帰りのバスの中で急遽、講師陣にスピーチをお願いし、4日間にわたるウインタースクールのまとめとしました。講師陣からは、このウインタースクールで産まれた議論や学際的なコラボレーションを将来に渡って発展させて欲しいとのコメントがありました。

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エキサイティングな講義と活発な議論のもとで、大きなトラブルもなく無事に第二回目の国際スクールを終えることが出来ました。国際スクールLOCとして、参加を快諾してくださった講師の方々、参加者の方々をはじめ、様々な面から支援していただいた飛騨市役所の方々、貸切状態で快適に会議を開くためにご協力いただいた「ホテル季古里」のみなさんに感謝いたします。
(国際スクールLOC 飯塚毅・上木賢太)

<参加者の声>
3泊4日の合宿形式で行われたスクールでは、自身が今まで深く学んでいなかった様々な分野の講義を聞くことができて、大変有意義な時間を過ごすことができました。講師の方々が、大変分かりやすい説明をしていただいたおかげで、英語が苦手である私も、理解することができた点が多かったと思います。分からなかった点については自分で調べてみようというモチベーションにつながりました。また、神岡地下実験施設の見学は初めてだったので、そのスケールの大きさと最先端の研究に触れることができて非常に興味深かったです。また、このような機会があれば、ぜひ参加したいと思います。
(市東力 東北大学B4)

自分の研究テーマが地球深部科学ではないため、内容についていけるか多少の不安はありましたが、神岡地下実験施設を見学することができると聞いて、とにかく行ってみよう!という気持ちでスクールに参加をしました。そして、結果的にとても有意義な時間を過ごすことができました。スクールに参加をして特に良かった点は、今まであまり触れたことのなかった分野について存分に学ぶことができたことです。主に地球深部に関する様々なテーマについて詳しく学び、新しい興味が湧いてきました。お目当ての神岡地下実験施設では最新の観測設備を見学することができ、この施設から宇宙や地球の謎が明らかになっていくのかと思うととても興奮しました。鉱山という環境にもワクワクしました。また、様々な年代、バックグラウンドの研究者や学生とフランクに交流する機会を得たことで、新しい繋がりを作ることもできました。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
(森井志織 東京大学M1)

今回の国際スクールでは、飛騨の山々に囲まれたホテルに缶詰めになり四六時中地球科学に浸れる濃厚な時間を過ごせました。講義内容をその場で理解することは難しかったですが、大変有難いことに講義スライドや参考文献を公開して頂けたため、興奮覚めやらぬ間に復習を行い惑星科学を俯瞰して考えるための新たな視点を手に入れることができました。更に、自分の勉強不足な点や今後の研究計画を省みる良いきっかけにもなりました。また、神岡地下実験施設の見学では、挑戦的な構想を実現するために検出感度の向上やノイズの低減などの限界に立ち向かう姿に触れることができ、自分の実験・分析システムの開発・改良の励みになりました。最後に、5名の先生方による高密度な講義に加え、様々なバックグラウンドを持った先生や学生の方々と交流し互いの課題を分かち合い再考する千載一遇の好機を頂いた事に感謝致します。
(萩原雄貴 北海道大学M2)

I enjoyed and learned a lot during the winter international school at Hida. In my research, I try to advance the understanding of the seismic anomalies at the core-mantle boundary, more specifically, ultra-low velocity zones, by conducting high-pressure and high-temperature experiments to study the physical properties of minerals. Therefore, I was particularly interested in the lectures given by Prof. Barbara Romanowicz, who is leading seismologist using seismic tomography to study the structure of the deep Earth. During the lectures and poster presentation, I had a chance to deepen the understanding of my own research by talking with real seismologists. I understood that people from seismology desire more collaborations with those studying mineral physics, and vice versa.
Liang Yuan (Tohoku University)

I am extremely satisfied with the Core-Mantle Coevolution International School in Hida. As a particle physicist working on geoneutrinos, I found it valuable to learn about the geology aspect of the topic of my research. The geoneutrino predictions come from and tie into so many areas in geology, such as geochemistry and seismology. I have learned a lot and felt like I have a better understanding of the global worth of my research. Merging the disciplines and collaborating improves the science, therefore such interdisciplinary schools and workshops are definitely necessary. I loved talking and sharing ideas with various people at the school and I found the lectures interesting and engaging. I hope that the connections I made and experience I gained during this school will be long lasting.
Ingrida Semenec (Queen’s University)

「核-マントルの相互作用と共進化」第二回国際スクール
-地球内部のエネルギー循環、熱史、化学不均質の形成進化-

日時 2019年3月7日~10日(三泊四日)
場所 ホテル季古里(公式HP
ラボツアー 3月8日(金)14:00~
KamLAND、Super-Kamiokandeなど神岡地下実験施設の見学(ラボツアーのみの参加も可)
講師 Andrew Campbell (Univ Chicago)
Mark Chen (Queen’s Univ)
Stephane Labrosse (ENS Lyon)
William F McDonough (Univ Maryland)
Barbara Romanowicz (UC Berkeley)
ポスター発表について – ポスター : 最大 90 cm (W) x 120 cm (H)。A0 (84.1 x 118.9 cm)を推奨します。縦型。
– 事前提出物
* アブストラクト :フォーマットを使い英語で作成してください。PDFで提出してください。
* 1ページスライド : ポスターの内容をまとめた1分の学生発表を予定しています。PDFで提出してください。
– 提出締め切り、提出先 : 2月28日、school_loc -at- core-mantle.jp
参加費等 ホテルにチェックイン後、スクール参加受付を行いますので、参加費4,000円を現金でLOCにお支払いください。なるべくおつりのないようにお願いいたします。
宿泊費はチェックアウト時に直接個人でホテルにお支払いください。(カード払い可)
○参加登録費 : 4,000円
○宿泊費 : 37,000円前後 (三泊四日・食事代込み)
お問い合わせ 国際スクールLOC (渡辺寛子、飯塚毅、上木賢太、土屋卓久)
school_loc -at- core-mantle.jp
参加者の方は以下参加者専用ページを随時チェックしてください。
https://en.core-mantle.jp/school2019

Time Table

こちらをご覧ください

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