領域の概要

本領域の目的

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観測と実験の両面から地球深部の構造、物質構成に関する研究は近年著しく進展してきました。しかしながら、地球全体の体積の8割を占めるマントルの化学組成、残りの2割に相当する核に含まれる軽元素の組成は60年余りに渡って未解決のままとなっています。核とマントルの境界層領域は、地震学からは活発な対流運動が示唆されているのに対し、地球化学からは地球形成当初の痕跡が46億年もの間、保持し続ける安定領域の存在が示唆されていて、両者の描像は相容れない状況です。また、地球内部の運動を駆動する熱源となる放射性同位体の種類と量も未解明です。
このような地球内部科学における未解決の重要問題は、核とマントルを結合系としてとらえ、その相互作用を明らかにすることで初めて解明が可能となります。現在、地球中心部に至る温度圧力条件での実験が可能であり、高精度な地球物理学観測、精密地球化学分析、数値シミュレーション技術も大きく発展しています。一方、地球ニュートリノ観測による地球深部における放射性元素分布観測も実用性が高まってきています。
本領域では、地球惑星科学においてそれぞれ独立に大きな進展を遂げてきた研究分野を融合することにより、核-マントル相互作用と共進化に焦点をあて、地球深部科学における大きな未解決問題を解き明かすことを研究の目的としています。

本領域の内容

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本領域では、(1)マントルと核の化学組成と放射性同位体分布、(2)核-マントル境界領域の不均質構造の起源と安定領域(リザーバー)の関係、(3)外核の化学成層と内核の不均質構造の解明を重要なターゲットとして研究を進めます。そのために、多様な分野の研究者が参画する国際的にも例のない幅広い学際的研究組織からなる、5つの研究項目を設定しました。A01「物性測定」では核とマントルの構造と動的挙動を支配する鉱物学的・物質科学的実験データを収集します。A02「化学分析」ではマントル由来物質や高圧合成試料の微小領域分析により核-マントル間の元素分配や同位体分別を制約します。A03「物理観測」では、地震・電磁気・地球ニュートリノ観測技術を駆使し、核とマントルの動的挙動に関する実証データを取得します。A04「理論計算」は各研究項目で得られたデータを第一原理計算や連続体シミュレーションにより解釈・モデル化するとともに、実験や観測に指針を与えることを目的とします。
B01「統合解析」は公募研究からなり、A01からA04の研究項目を複数カバーする分野横断型の研究を実施します。これらにより、領域全体で動的・統合的地球深部科学の創成を目指します。

期待される成果と意義

本領域を構成する高圧地球科学と地震学の研究者は従来から連携して共同研究を行っており、単純な組成モデルに基づく地球内部構造の解明に大きく貢献してきました。本領域は従来の地球科学研究の枠を超えた広がりを持ち、我が国が世界を先導する実験・数値高圧地球科学と観測地球物理学分野に加え、精密化学分析を駆使した地球化学や急速に発展しつつあるニュートリノ地球物理学分野の研究者とも連携を展開することにより、地球科学の新たな潮流を創成しうるものです。地球深部での元素分配や同位体分別を実験と理論の両面から決定することにより進化の時間軸を明確にし、地球内部ダイナミクスを支配する核-マントルの相互作用と共進化の理解が飛躍的に進むと期待されています。先進的研究を推進する中で、グローバルに活躍できる人材の育成を推し進めていくことも本領域の大きな意義の一つです。

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研究領域一覧

本研究では、①マントルの化学組成と核の軽元素、及び放射性元素の分布の特定、②地震学的に観測される核-マントル境界領域の不均質構造と地球化学的に示唆されるリザーバーとの関係の解明、③外核の化学的成層構造と内核の不均質、またそれらの成因の解明を研究の軸として、これまで密接な連携が必ずしも進んでいなかった分野の研究者を物性測定(A01)、化学分析(A02)、物理観測(A03)、理論計算(A04)の各研究項目として組織し、従来の静的・個別的な研究から動的・統合的地球深部科学の創成を目指す。

organization.ai

 

 

X00 総括班
A01 物性測定班
A02 化学分析班
A03 物理観測班
A04 理論計算班
Y00 国際活動支援班


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総括班では、各計画研究間の双方向の連携研究を有機的に促進するために、組織的かつ戦略的な運営を行うとともに、次世代の研究者の育成も視野に入れた若手育成を行う。また、次のような活動をその基本計画とする。①研究推進部会により年3 回総括班会議を開催し、国外での研究動向を探りながら、各計画研究の研究進行状況を把握し、領域全体としての方針の決定と研究の推進の舵取りを行う。②研究推進部会によりアウトリーチ・広報活動を行うとともに、レクチャーシリーズ、メンターワークショップ、先端技術インターンシップなどの人材育成プログラムを、研究支援部会の支援のもと行う。③研究支援部会により、関連施設の大型高圧装置や同位体分析装置を高度化及び維持・管理するとともに、各計画研究ならびに公募研究の技術的支援と教育活動を行う。平成27 年度は、キックオフシンポジウムを速やかに実施し、総括班会議に基づく領域の研究方針及びロードマップを周知するとともに、各計画研究における円滑な研究開始を支援する。平成28 年度以降は、各研究計画間の連携に留意して研究の推進を図るとともに、開始される公募研究と既存の研究計画間との連携による領域の新たな研究の展開を期す。また、若手研究者育成のプログラム、研究集会・国際シンポジウム、アウトリーチ・広報活動、大型装置の維持・管理及び技術支援等の活動を行うとともに、内部・外部評価、及び研究成果の取り纏めを行う。


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我が国の高圧地球科学分野は、マントル、核にいたる地球深部を対象に先駆的な研究で多くの成果を挙げてきており、地球深部の組成、構造の大局的理解に貢献してきた。しかし、核−マントル境界をまたぐ全地球内部の熱対流現象の理解は十分に進んでいるとは言い難い。流動の主要な駆動力は、地球の冷却に起因する地球中心核からの正の熱流とマントル内を沈み込んだ冷たいスラブがもたらす負の熱流である。これらの正負の熱流がマントル対流だけでなく、ダイナモを引き起こす外核の対流、さらには内核の塑性流動にも影響を及ぼしていることが指摘されている。そこで、本研究計画では、核、マントルを1つのシステムとして捉え、内核と下部マントルのそれぞれの主要構成物質の粘性、流動則、選択配向を決定するとともに、核マントル境界部における熱伝導、電気伝導度、元素拡散といった熱・物質輸送に関わる物性を高圧実験の手段により決定する。地球物理学的観測との比較から、核−マントルを含む地球深部のダイナミクスと核−マントル相互作用を包括的に解明することを目的とする。

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核-マントル境界まで沈み込んだ海洋プレートは、核との相互作用によって浮力を得て再び上昇すると考えられている。このような物質循環によって、地球内部は誕生以後、分化が進んできた。しかしながら、地球深部がどのような物質でできており、それがどのような物性をもつのかは十分解明されているとは言い難く、物質循環や分化プロセスは未解決の問題である。本研究では、様々な地球内部物質の密度や弾性波速度などの物性測定および物性の根源となる構造を解き明かす。また本領域研究で掲げる到達目標を達成するため、計画研究各班と連携してマントルの化学組成と核の軽元素を解明し、核-マントルの不均質構造をもたらす物質を解明することを目的とする。特に我が国が先導的な役割を果たし数多くの実績を挙げてきた、量子ビームなどを活用した超高圧力下での実験的研究をより一層推し進める。

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最下部マントルから核領域に至る超高圧・高温下での、精密実験技術の開発を主要な研究目的とする。特に独自に開発したナノ多結晶ダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)や焼結ダイヤモンド(SD)をアンビルとして活用し、放射光や中性子などの量子ビームと組み合わせることにより、独創的な超高圧技術の開発に重点を置いた研究をすすめる。得られた実験技術と装置を、他の研究計画メンバーや関連若手研究者及び学生に提供・共有することにより、領域全体の研究推進や若手育成においても重要な貢献をすることを目指す。


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本研究班では,可能な限り実際の環境に近い条件での高温高圧実験と,実験生成物の局所高感度元素組成・同位体分析を行うことによって,核-マントル境界での同位体挙動・分配を明らかにし,同位体の変動を作りうる条件と起こりうる分別の大きさを制約する。同時に,下部マントル起源と考えられる火山岩等の高精度同位体分析を行い,これらのデータを用いて時間軸を含めたモデリングを行い,現在観察されているマントルの同位体変動のうち核-マントル相互作用によって生み出されている同位体変動成分を抽出する。上記高温高圧実験結果と融合して,核の進化,時間軸を持った核-マントルの化学反応を,世界に先駆けて明らかにする。さらに,U, Th, K などの放射性同位体を含む元素の核への分配を決めることで,核の熱史を明らかにする。核の熱史は当然,地球進化や表層の環境変動に影響を与えてきたはずで,それを明らかにすることも本研究班の目標である。

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本計画研究では高温高圧下での元素分配・同位体分別係数の定量化を重要な目的とする。鉄-ニッケル合金から構成される地球の核において、液体である外核は、地震波による観測から純鉄より10%ほど低い密度を有することが知られており、軽元素や強親鉄性元素の存在の可能性を示している。さらに現在のマントルにおいても最下部にマグマが存在し、形成初期に起こった化学的分化を現在まで軽元素や微量元素がリザーバーとして記録している可能性がある。つまり地球内部において起こり得る化学的分化を理解するには、高圧力下における液相-固相間または金属メルト-珪酸塩メルト間(液相不混和)の元素分配係数や同位体分別係数の決定が必要である。本研究では、マントル最下部圧力条件までの岩石の融解実験を行い、元素分配係数や軽元素同位体分別係数を定量化し、初期から現在までの地球化学的進化の理解につなげる。


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地震学・地球電磁気学的構造研究は静的な地球深部構造の理解に大きな寄与を果たしてきたが、物質の動的挙動の解明については十分な貢献がなされてきたとは言い難い。本計画研究では核-マントルの共進化という新たな視点に立脚して、地球物理的観測から地球深部の統合的理解に貢献する。たとえば、地球深部での変形機構を理解するために重要な観測情報である地震波速度の方位異方性・減衰は十分に解明されていない。また、熱輸送を議論するためには、マントル最下部地震波速度不連続面の深さを正確に押さえ、実験・理論から得られる相図から温度を推定する必要がある。熱伝導度と密接に関連する地球深部の電気伝導度も観測による直接的な検証はなされていない。本計画研究では、各国との共同研究によって収集する非公開データや機動的観測による新規データを基に、上記のような課題にアプローチする。

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我が国が地球内部放射性元素起源のニュートリノ(地球ニュートリノ)の検出に、世界に先駆けて成功してから、10 年余が経ち、データ蓄積量が地球深部における放射性元素の直接観測が可能なレベルに達している。一方、マントル内の主要な熱源である放射性元素の種類と量は未だに分かっておらず、核-マントルの熱進化の理解が進んでいない。本研究では巨大反電子ニュートリノ検出器(KamLAND)近傍の地球ニュートリノ流量モデリングの精度を地球科学的アプローチから向上させ、期間内に蓄積量が倍加する地球ニュートリノ観測データと合わせてマントル中のウラン、トリウム濃度を決定する。また、革新的新技術である到来方向検知型ニュートリノ検出器の開発を推進し、長期的に世界をリードする基盤を形成する。


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本研究では、実験室での再現が困難な地球深部の超高温高圧環境や地質学的時間スケールを大規模数値シミュレーションにより計算機内に作りだし、①マントルの化学組成と核の軽元素、及び放射性元素の分布、②地震学的に観測される核-マントル境界領域の不均質構造と地球化学的に示唆されるリザーバーとの関係、③外核の化学的成層構造と内核の不均質またそれらの成因、に関する実験・観測研究をサポートするとともに、地球の多様性を生み出した核-マントル共進化の本質的要素を抽出しモデル化を行う。また、実験班・観測班が取得するデータに対し、理論的検証や解釈などのサポートを行う。

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本領域における国際的ネットワークの構築や、国内外の共同研究・情報発信を行う。特に、高圧科学コンソーシアムを中心とした全米・ヨーロッパ・アジアの拠点機関等との連携を強め、国際的な共同研究や人材交流を推進する。また、学生や若手研究者に海外研究者が直接アドバイスを与えるメンターワークショップや、計画研究をまたがって海外に短中長期滞在して研究活動を行うインターンシップなど、若手の育成も考慮した領域研究活動を推進する。
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ロゴ

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