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A01-3入舩徹男教授(愛媛大)らがCaPvの弾性波速度測定に成功

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本領域A01-3入舩徹男教授(愛媛大学)、A01-2肥後祐司主幹研究員(高輝度光科学研究センター)、山田明寛助教(滋賀県立大学)らのグループは、放射光X線を利用したその場観察実験と超音波測定実験の組み合わせにより、マントル中の主要な高圧型鉱物であるCaSiO3ペロブスカイト(CaPv)の弾性波速度の測定に成功し、研究成果を2019年1月10日発行のネイチャーにおいて発表しました。
入舩教授らは新たな手法に基づき、深さ660 km不連続面に対応する圧力温度条件下で、CaPvの弾性波速度測定を直接測定することに成功し、これが従来予想されていたよりも、はるかに遅い弾性波速度を示すことを示しました。沈み込むプレート構成物質のうち、玄武岩からなる海洋地殻物質は、マントル深部条件下ではCaPvを20-30%含むことが知られています。今回の実験結果から、このような玄武岩質の物質は、周囲のマントルに比べて弾性波速度が大きく低下することがわかりました。
近年北アメリカなどの下の660 km不連続面直下において、地震波速度が低下する領域が発見され、この付近で生成する可能性があるマグマの影響であると解釈されています。しかし本研究は、この低速度領域が、この付近に存在する沈み込んだ海洋地殻に由来する、玄武岩質の物質により説明可能なことを示しました。最近深さ660 km付近のマントル深部から上昇してきたと思われるダイヤモンド中に、初めて天然のCaPvが発見されましたが、本研究結果はこの発見とも整合的であるとともに、マントル深部におけるプレートゆくえの解明において、重要な意義を持つと考えられます。
なお、本研究の概要はネイチャー誌のNews & Viewsでも紹介されました。また、著名な科学ニュース雑誌”Discover”や”Phys.org”においても本論文に関する記事が掲載され、国際的にも反響を呼んでいます。

Steeve Gréaux, Tetsuo Irifune, Yuji Higo, Yoshinori Tange, Takeshi Arimoto, Zhaodong Liu and Akihiro Yamada, 2019, Sound velocity of CaSiO3 pervskite suggests the presence of basaltic crust in the lower mantle, Nature, 565, 218–221, Doi: 10.1038/s41586-018-0816-5